事務所引っ越しは、企業にとって大きなイベントの一つです。
しかし、引っ越しの準備に追われる中で、情報システム部門の方々が抱える課題も少なくありません。社内SEが引っ越しの前後に行うべき作業は多岐にわたりますが、重要なポイントを見逃すと、引っ越し後の業務に支障をきたすことになります。
この記事では、私自身がシステム部門の社内SEとして経験した事務所引っ越しにおいて注意すべきポイントについて解説します。
本来であればネットワーク敷設工事とかにも関わりますが、そこまで含めるとブログだけでは説明出来なくなるので工事関係は省きます。
前提条件
各社、社内SEの業務範囲や移転にあたっての条件が違うので、まずは前提条件の説明をします。
今回、私が経験した事務所移転にあたっての前提条件は次の通りです。
- システムやネットワークは多拠点化を前提に設計していない
- 移転前の事務所は一部設備と人員を残す
- 電話番号は移転前のものを引き継ぐ
- 移転前の事務所のサーバーも移転する
- 移転前の事務所に残るメンバーもサーバーへアクセスを行う。
それでは1つずつ紹介していきます。
ネットワークインフラの確認と移行
今回、私が担当した部分で一番大変だったのがこのネットワーク関係の移行でした。
なぜなら今回の事務所移転は初めての多拠点化でもあり、多拠点化のためのネットワーク設計からはじめました。
また拠点が増えるのではなく、本社移転のため影響範囲が大きく、設計も作業も慎重に行う必要がありました。
ネットワークインフラで考慮すべき点は下記になります。
- 移転先のネットワークは移行か新設か
- 今回は移転前の拠点も一部残す必要があったため新設
- 移転先と拠点との通信はどうするか
- 今回は拠点から移転先サーバーへのアクセスが必須だったため、拠点間VPNを選択
利用しているサービスがSaasのみだったり、サーバーやゲートウェイがデータセンターにあるのであればあまり深く考える必要はありません。
今回はサービスを含むサーバーやゲートウェイの移行も行いました。
電話関係の移設
電話番号は移転前のものを極力引き継ぎたいとの要望をうけていましたが、移転先住所の関係で移設は不可でした。
しかし今回は移転前の事務所も稼働し続けるため、契約を残せば電話番号自体は残すことができます。
そこで主装置同士をVPN接続するというソリューションを利用することにしました。
設備の移行
私が関わったプロジェクトではネットワークに繋がる機械は基本的に社内SEが管轄していましたので、それらの機器を移設するのか、新規で購入するのかの判断が必要でした。
サーバー
サーバーの移転作業は規模によりますが、自力での移転作業は極力避けましょう。
引っ越し業者の専用のオプションを利用するか、メーカーや販売元に確認して作業してもらうのが安全です。もちろん基本的にお金がかかります。
その場合も移動後の配線まで全て依頼出来る場合と、移動しかしてくれず移動前の線外しと移動後の配線は自社で行わなければいけない場合があります。
自分のスキルに合わせてどうしたいかを業者と相談しましょう!
複合機やプリンタ
複合機については移転先事務所の規模や座席配置によって台数が変わるため、設置場所の検討とそれに伴う台数の増減に対応する必要があります。
こちらもサーバーと同様に移動は業者への依頼になると思いますが、移動後に何らかの設定変更が必要な場合があるので販売元に確認してください。
保守を受けている場合は設置場所登録があるので連絡が必要です。
プロジェクター
会議室の天井などに常設されているプロジェクターもただ移設先に移動するだけでは使えません。
ある程度の大きさになると、プロジェクターは焦点距離ごとにレンズが変わるため、移設先のプロジェクター設置場所とスクリーンの距離によっては別のレンズを購入する必要があります。
事前に調べておかないと、いざ移転先に設置しても使えない可能性があるので要注意です!
クラウドサービスの設定変更
クラウドサービスについては単体で使っているものであれば移行は不要ですが、オンプレミスのシステムと連携しているシステムであれば、そのサーバーが移転対象の場合は設定変更が必要な場合があります。
またシステムとは直接関係無いですが、各クラウドサービスの設定画面で組織情報の住所を更新しておかないと、請求書が正しく届かない場合があるので、住所変更はしっかり行いましょう。
外部業者との調整
作業によっては事前に移転先の事務所へ下見が必要になります。
また実際の社員の引越し前までに実施しておく作業をいつごろ行うのかの確認が必要です。
またシステム部門で勝手にスケジュールを行っていても、移転先の事情で入室できなかったり、別の部門の業者作業と被って作業ができなかったりなどもあるので、全体のスケジュールを管轄している責任者にも確認しましょう。
社内ユーザーへの周知
場合によりますが、ネットワーク環境や設備が変わることでPC側での設定変更が必要になる場合があります。
そのため事前にどういった設定変更が必要なのかと、その変更方法の手順書を用意して社員へ周知することで、移転後のトラブルを最小限にできます。
事務所移転で再設定が必要と思われる項目をいくつか挙げておきます。
- Wi-Fiパスワード
- IPアドレス
- プリンター設定
最後に
事務所引っ越しは、企業にとって大きなプロジェクトの一つですが、情報システム部門の方々が適切な対応を行えば、引っ越し後も円滑な業務運営ができます。
社内SEは、引っ越し前に各種設備の確認・移行やセキュリティ対策、引っ越し後の設定変更や不具合対応など、多岐にわたる業務を担当しますが、本記事で紹介した注意点を押さえておけば、スムーズな移転ができることでしょう。
事務所引っ越しに向けた準備は、余裕を持って行い、チーム全体で協力して進めましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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